報告日2020年4月2日

佐賀大学本庄キャンパスで「親子で考える!理系進路の多彩な未来2019」を実施しました

開催日2019年8月8日(木) 場所佐賀大学 本庄キャンパス 理工学部6号館2階 多目的セミナー室(佐賀市本庄1番地)

2019年8月8日(木)に、継続・育成型リケジョプラットホームin SAGAの一環として「親子で考える!理系進路の多彩な未来2019」を行いました。対象は中学生・高校生・大学生・大学院生、小学生~高校生の保護者、教育関係者や一般の方です。佐賀大学のオープンキャンパスと同時開催で、佐賀大学を知ってもらうとともに、将来の選択肢を広げる材料のひとつとして理系進路の魅力を伝えることを目的としています。

参加者は中学生18名、高校生70名、保護者21名、一般の方10名の合計119名でした。

第一部は、佐賀大学農学部出身で国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)博士の永松愛子氏を講師に迎えた基調講演「世界へ!宇宙へ!~未来を担うあなたへ~」。永松氏のキャリアやJAXAでの業務について、中高生にもわかりやすくかみ砕いて説明してくださいました。
永松氏は1999年のJAXA入社後、有人宇宙技術部門、広報部 報道・メディア課を経て、現在は研究開発部門 宇宙環境計量領域長を務め宇宙放射線や宇宙ゴミの環境計測に関する研究に携わっています。
小学生の頃、宇宙飛行士 向井千秋氏の活躍に魅せられライフサイエンスの道を志したという永松氏。宇宙開発にまつわる新聞記事のスクラップをたくさん集めて周りに見せては夢を語っていたところ、新聞記者の目に留まって取材を受けることになり、記者の計らいで向井氏と直接お話しする機会に恵まれました。それから時は経ち、JAXAにて向井氏の初めての部下として勤務することになったのが永松氏だったそう。「日ごろからやりたいことを伝え続けていれば周りは応援してくれて、その積み重ねが不思議な縁を引き寄せる。佐賀大学にも力になってくれる先生や研究室の仲間がたくさんいる。皆さんも恥ずかしがらずに夢を発信して」と話しました。
JAXAで幅広い業務に携わるにあたり勉強したことについて永松氏は、「広報配属時は素人からのスタートだったので、映画『空飛ぶ広報室』を見てイチから学んだ。宇宙船の構造もわからなかったので、息子の提案で『はやぶさ』やいろいろなロケットのプラモデルを買い子どもと一緒に作って勉強した」とのエピソードを明かし、「社会に出るとライフステージによって担当する業務が変わり、学び直さなければいけなくなる場面もある。今は生涯学習社会でずっと勉強し続けないとキャリアアップも難しい。皆さんも何か自分の得意をみつけて勉強していってほしい」と話しました。
今後の展望の話題では「2022年から、月周回をする国際宇宙ステーションを作りそこに人を送り込んで長期滞在をしようというゲートウェイ計画が始まる」と伝え、「もし皆さんがJAXAに入るとしたらこの実験に携わっていただきますのでよろしくお願いします」と笑顔で呼びかけました。
質疑応答では「高校理科は何を勉強しましたか」という問いに「国立理系クラスで生物と科学」と答えた後、「学校で学んだことだけで仕事ができるとは限らない。私もJAXAに入って物理が必要になり、高校物理から勉強し直した」と続けました。「もし進路選択の過程でミスマッチが生じたら」との相談には「本気でやりたいことがあるのなら、たとえ学生時代に成績面で難しかったとしても社会人になってからチャレンジする方法はいくらでもある。諦めないでほしい」とアドバイスしました。

第二部は永松愛子氏に加え、農学部 生物資源科学科 生物化学コースのツジ田有紀准教授(ツジは辻の点が一つの漢字)・理工学部 都市工学部門の宮原真美子准教授の登壇によるトークセッション「…で、理系って、大学って、どんなところなの?」。進行役は当室副室長 荒木薫が務めました。
それぞれの自己紹介の後、佐賀大学での研究の様子や理系の魅力、自身の子どもの頃の夢と今についてざっくばらんに話していただきました。
ツジ田准教授は農学部の学生について「半分は女子で、賑やか」と話し、「1~2年で基礎を学び、3年から実験やフィールドワークで専門分野を学ぶ。卒業後の進路は農業系や食品会社が多いが、電気配線工事会社に勤めた人やフィールドワーク好きが高じて旅行会社に就職した人もいる」と言い、「それぞれの専門性を高めた結果だけでなく、プロセス含めてどこかで社会の役に立てる自分の特性が見つかるはず」と話しました。
宮原准教授は、「建築コースでは実習(設計)がメインで、作品づくりやディスカッションを通して学んでいる」と説明し、「建築は理系の分野だがコミュニケーション能力が重要。私自身も生物から方向転換して今に至るが、やってきたことは何でも役に立っている。文理の違いは物の見方の方向性だけで実はそんなに大きく変わらないのかもしれない」と話しました。
最後に中高生へのメッセージとして、永松氏は「社会に出ると文理両方の知識が必要になる。苦手と感じても時間をかけて磨いていってほしい」、ツジ田准教授は「『自分が何をしたいか』を大事にし、具体的な学びにつなげてほしい」、宮原准教授は「大学には学ぶ楽しさがあふれている。ぜひお待ちしています」との言葉を贈りました。

ご参加くださった皆さま、講師の永松愛子氏に心よりお礼申し上げます。

このプログラムは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)からの受託事業「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」の助成を受けて実施しています。佐賀大学はでは中高大接続の一環として、女子中高生の科学・ものづくりへの興味を促し自分自身のキャリアデザインを考える場を提供する「リケジョプラットホームin SAGA」を今後も展開していきます。